当科の人工股関節置換術の特徴
1. アプローチ
人工股関節置換術の仕方は、大きく前方系アプローチと後方系アプローチの2種類があります。これまで日本では後方系アプローチが主流でしたが、最近では前方系アプローチを取り入れる病院が増えています。前方系アプローチが増えている理由の1つとして、後方系アプローチの脱臼率が1〜9.5%であるのに対し、前方系アプローチの脱臼率は0〜2.2%と低いことが挙げられます。前方系アプローチでは、筋肉や腱を切らずに股関節まで到達することができるため、術後の脱臼率が低く、術後の筋力回復が早いことがわかっています。当科で人工股関節置換術をおこなった患者さんは平均術後2週で自宅退院されます。若い方や筋力がある方は、術後1週で自宅退院して早期の社会復帰を実現されています。これらの利点があるため、当科でも前外側アプローチを用いて人工股関節置換術をおこなっています。皮膚切開は約7-8cm程度です。
2. 手術体位
前外側アプローチは、横向きに寝る側臥位でおこなう方法と、仰向けに寝る仰臥位でおこなう方法があります。当科では、仰臥位での手術にこだわっています。その理由は、手術中に設置した人工物の状況をリアルタイムで確認できるからです。人工股関節置換術の術後成績を左右する要因の1つとして、人工関節の設置精度が挙げられます。仰臥位であれば、手術中に設置状況を確認できるため、人工股関節の設置ミスを、限りなく減らすことが可能となります。
3. より正確な人工股関節の設置を目指して
上述したように、人工股関節置換術の術後成績を左右する要因の1つとして、人工関節の設置精度が挙げられます。そのため、当科ではより正確に人工関節を設置するために最新の術前計画ソフトと術中ナビゲーションを用いています。
1) 術前計画ソフト
術前のCTデータをもとに、患者様に最適な人工関節サイズの確認と、どのように人工関節を設置するべきかをCTデータから構成された3D画像を用いてシミュレーションをおこなっています。