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What is FAI?   

大腿骨寛骨臼インピンジメント (FAI) とは

  1. 病態

大腿骨寛骨臼インピンジメント(以下 FAI)は、股関節痛、股関節唇損傷、軟骨損傷、早期の変形性股関節症の原因の一つとして明らかとなってきた1。FAIでは、大腿骨骨頭・頸部と寛骨臼蓋縁との間の、繰り返される衝突により関節唇や関節軟骨の損傷が起こり、さらに関節症性変化(OA)を惹起されることが知られている。1 特にアスリートやスポーツ愛好家においては、痛みや可動域制限のためにパフォーマンスの低下を来すため、低侵襲な治療が望まれる。エリートアスリートでは、一般の人と比較して、レントゲン上で骨形態が FAIが示唆される頻度が60%〜95%と極めて高い。今まで欧米人のみ多く日本人は少ないと考えられてきたが、日本人のプロ選手でもその頻度は高いことが報告されてきた。

アスリートでは、陸上やトライアスロンなど耐久性のスポーツ、 バスケットなどのピボッド動作の多いスポーツ、格闘技、コリジョンやコンタクトスポーツなどであらゆるスポーツ活動でインピンジメントが惹起されやすい。股関節痛や鼡径部痛を訴えてきたアスリートを診る機会があれば、慎重に診察を行う必要がある。

   FAIが報告する前までは、 股関節唇はその病名にのみ治療されることが多かった。しかし、股関節唇損傷の87〜90%は、 FAIによるインピンジメントあるいは寛骨臼形成不全などの骨形態異常が原因であると考えられ、股関節唇損傷のみの治療を行っても、治療成績が満足のいく結果が得られていないことが数多く報告されており、FAIが基礎疾患であることを見逃してはならない。

  1. 診断指針 (日本股関節学会より)

レントゲン学的な診断としては、 Pincerと Camに分かれる。Pincer type FAIを示唆する画像所見として①CE角40°以上、②CE角30°以上かつAcetabular roof obliquity(ARO)0°以下、③CE角25°以上かつcross-over sign陽性が挙げられている。したがってCE角25°以下の症例は寛骨臼形成不全としてFAIから除外する必要があることを示唆している。

Cam type FAIを示唆する画像所見として主項目α角55°以上、副項目Head-neck offset ration(0.14未満)、Pistol grip変形、Herniation pitのうち主項目を含む2項目以上の所見を有することが挙げられる。

単純レントゲン写真の各パラメーターを詳細に計測する必要がある。

身体所見では前方インピンジメントテスト(股関節屈曲・内旋での疼痛誘発を評価)陽性と股関節屈曲内旋角度の低下が挙げられている。日本股関節学会の診断指針ではこれらの画像所見を満たし、臨床症状を有する症例を臨床的にFAIと判断するとしている。なおこれは明らかな股関節疾患に続発する骨形態異常を除いた狭義のFAIに対する診断指針であり、股関節外傷を含む既知の股関節疾患や股関節手術の既往は除外項目に挙げられています。

FAI (狭義*)の診断指針

(*明らかな股関節疾患に続発する骨形態異常を除いた大腿骨一寛骨臼間のインピンジメント)

画像所見

• Pincer type のインピンジメントを示唆する所見

① CE 角40゜以上

② CE 角30゜以上かつ Acetabularroofob liquity (ARO) 0 ゜以下

③ CE 角25゜以上かつcross-over sign陽性

*正確なX 線正面像による評価を要する。特にcross-over signは偽陽性が生じやすいことか

ら,③の場合においてはCT· MRI で寛骨白のretroversion の存在を確認することを推奨する。

• Cam type のインピンジメントを示唆する所見

CE 角25゜以上

主項目: a 角(55゜以上)

副項§ :H ead-neck offsetra tio (0 .1 4未満), Pistol grip変形, Herniationpit

(主項目を含む2 項目以上の所見を要する)

*X 線, CT, MRI のいずれによる評価も可

身体所見

•前方インピンジメントテスト陽性(股関節屈曲・内旋位での疼痛の誘発を評価)

.股関節屈曲内旋角度の低下(股関節90゜屈曲位にて内旋角度の健側との差を比較)

最も陽性率が高く頻用される所見は前方インピンジメントテストである。Patrick テスト(FABER

テスト) (股関節屈曲・外転・外旋位での疼痛の誘発を評価)も参考所見として用いられるが,他

の股関節疾患や仙腸関節疾患でも高率に認められる。また,上記の身体所見も他の股関節疾患で陽

性となり得ることに留意する必要がある14, 21, 45) 。

診断の目安

上記の圃像所見を満たし,臨床症状(股関節痛)を有する症例を臨床的にFAI と判断する。

除外項目

以下の疾患の中には二次性に大腿骨一寛骨臼間のインピンジメントをきたし得るものもあるが,

それらについては本診断基準をそのまま適用することはできない。

.既知の股関節疾患

炎症性疾患(関節リウマチ,強直性脊椎炎,反応性関節炎, SLE など),石灰沈着症,異常骨化,

骨腫瘍痛風性関節炎,ヘモクロマトーシス,大腿骨頭壊死症,股関節周囲骨折の既往,感染や内

固定材料に起因した関節軟骨損傷,明らかな関節症性変化を有する変形性股関節症,小児期より発

生した股関節疾患(発育性股関節形成不全,大腿骨頭すべり症, Perthes 病,骨端異形成症など),

股関節周囲の関節外疾患

.股関節手術の既往

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